デジタル遺産とは、ネット銀行やネット証券の口座、電子マネーのチャージ残額、SNSアカウントなど、故人がデジタル形式で保管していた財産のことです。

【デジタル遺産の特徴】

デジタル遺産は基本的に、ネット上に保管されています。しかし、スマートフォンを解約するとデジタル遺産にアクセスできなくなる可能性があるので注意が必要です。

【デジタル遺産にはマイナス財産もある】

遺産には、「プラスの遺産」と「マイナスの遺産」があります。一般的に、プラスの遺産とは預貯金など経済的価値のある財産で、マイナスの遺産とは借金やローンなどを指します。デジタル遺産にもマイナスの遺産はあり、ネット証券や暗号資産などは、取引相場によってはマイナスの遺産となります。

【相続放棄も期限がある】

マイナスの遺産がプラスの遺産を上回る場合、相続人は自らの相続権を手放す「相続放棄」や、プラスの遺産の範囲でマイナスの遺産を引き継ぐ「限定承認」を選べますが、その意思表示の期限は相続開始を知った日から3ヶ月以内です。マイナスの遺産を知らなかったため意思表示せずに相続すると、思わぬ債務を相続人が背負うことにもなってしまいます。

【デジタルデータに「所有権」はない？】

実は、デジタル遺産について明示的・統一的な法律はありません。「デジタル遺産」はデジタルデータですが、民法上の「物」について有体性を要件とする見解からは、無体物であるデジタルデータについては民法上の「所有権」は観念できないことになります。

デジタル遺産の種類はいくつかありますが、各種ポイントやマイレージもデジタル遺産に含まれます。

■金融商品

・ネット銀行の口座

・ネット証券の口座

・仮想通貨（暗号資産）

・FX（外国為替証拠金取引）

■ポイント

・各種ポイント

・マイレージ

■電子マネー

・電子マネーの残高

■有料会員サービス

・定期課金サービス

・サブスクリプション契約

～デジタル遺品との違い～

「デジタル遺産」と混同されがちですが、「デジタル遺品」はパソコンやスマートフォンなどのデジタル機器に保存されたデータやインターネットサービスのアカウントなどのことです。デジタル遺産とデジタル遺品の大きな違いは、金銭価値があるかないかです。

具体的には、次のようなものがデジタル遺品にあたります。

・パソコンやスマートフォン内に保存された写真・動画または音声データ

・USBメモリや外付けハードディスクなどの記録媒体に保存されたデータ

・SNSなどの履歴情報やアカウント

・動画、音楽、電子書籍などの配信サービスのアカウント

・GmailやOutlookなどのWebメールアカウントなど

財産をデジタル化すること自体には数々のメリットがあります。デジタル遺産のスムーズな相続のために下記の項目を整理しておきましょう。

～デジタル財産の持ち主が取る対策～

・どんなデジタル財産を持っているのか、あらかじめ家族に話しておく

・サービスごとにID、パスワードがわかるようにメモしておく

・遺言書、エンディングノートなどに、デジタル遺産の目録（リスト）を作成する

・利用頻度の低いサービスは、思い切って解約する

～相続人が取る対策～

・デジタル遺産の相続対策のため、どんな財産があるのかを教えてもらう

・デジタル遺産が他の財産よりも遅れて発覚することを想定しておく

・デジタル遺産が多額のマイナス財産だった場合に備え、相続放棄も視野に入れておく

デジタルの資産を守るためにはノートにメモや、家族とのコミュニケーションという昔からのアナログの対策が一番です。

●iPhoneは要注意！

iPhoneは、パスワード（パスコード）を10回間違えてしまうと、スマートフォン内のデータが初期化（消去）されてしまう機能が標準装備されています。Androidのスマートフォンにも、同様の機能を設定できる機種があり注意が必要です。なお、パスワードロックを解除できない場合、データ復旧の専門事業者にパスワードロックの解除を依頼することが可能ですが、パスワードロックの解除は技術的にも大変難しいとされており、数十万円という高額な費用がかかるケースや、パスワードロックの解除まで半年以上かかるケースもあります。

●主要な連絡先はメモしておく

すぐにスマートフォンのパスワードが解除できない場合、電話帳（連絡先）にアクセスすることができず、葬儀などの連絡を友人や知人に知らせることができません。

●写真は何枚かプリントしておく

こちらもすぐにスマートフォンのパスワードが解除できない場合、写真フォルダにアクセスできず、遺影の写真を用意することができません。

まとめ

デジタル遺産は、私たちの生活の中で急速に増えている要素ですが、死亡や病気の際にそれを把握するのは難しいかもしれません。デジタル資産、情報、暗号通貨のすべてを問題なく引き継ぐためには、事前に計画を立て、家族など信頼できる人に周知徹底することが重要です。適切な準備と計画により、デジタル遺産を引き継げることができます。